鍾会様が泣いている。私を喪う夢ばかり見るのだそうだ。それで、私の安否を確認しに幕舎までやって来る。戦のたびこういうことがあるようになって、もうどれくらいたっただろうか。
 鍾会様は長い睫毛をしとどに濡らしながら私を抱き締める。そして嗚咽混じりに、私とひとつになりたいと言う。そうすれば生きるのも死ぬのも一緒だと。私は、それは嫌だなと思う。だって人は所詮、他人なしでは生きていけないから。ひとつになってしまったら、妙なところで繊細なこの人が今みたいに悲しんでいる時、誰が慰めるというのだろう。それに戦場でこの人が危機に陥った時、助けに行けなくなってしまう。それは大変困るので、私は今のまま別個の存在でありたい。
 あやすように鍾会様の背を撫でながら、私はいつもそんなことを考えるのだった。

130411


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